くもの巣がありました。
そこへ蝶々さんがやってきました。
あれっ!
くもの巣に蝶々さんはくっついてしまいました
くもは蝶々さんをたべてしまいました
これについて、くもさんのことをどう思いますか?
蝶々さんのことをどう思いますか?
そんな授業だった。
その日、母親や父親の姿を後ろにかんじながら、緊張した面持ちで手を挙げた子たちはなんにんいただろう。ななは手をあげなかった。
でも、蝶々さんがかわいそう、と、思っていた。
クラスの意見は半分にわかれた。
男子はくもは生きるためにやってるんだ、と主張。
女子はちょうちょさんがかわいそう、と主張。
先生は、蝶々さんがかわいそうというおんなのこたちは、くもさんがごはんがたべられなくなったらかわいそうに思う?といったり、おとこのこたちは、自分が蝶々さんだったらどう思う?といったりした。…ような気がした。
ななはそのとき、母親がきているはずだ、ということはしっていたけど、結局母親がいたのか、いなかったのか、いてもみてなかったのか、結果的に母親の姿をみつけることはできなかった。
ななはそのことを、まだ小1で、たしか…あんまりおぼえてないし、お母さんがいたかどうかなんて普通おぼえてないですよね、とS先生にはなした。
すると、S先生は、たぶん小1なら確実に母親ないし父親や、養育者がいたかどうかはまず憶えている、とおっしゃった。
そのあとこんなお話をされた。
『その人が母親である、というのは、客観的事実だと思っていますか?多くの人は、多くの人大人たちはそう思っています。でもそれは、そう“信じている”んです。おなじように、子供は母親を、母親だと“信じて”いる。でも両者は違う。DNA鑑定でもしたら、親子であるとわかるけどね、それは、別に子供にとって重要じゃない。その人が母親だと思っているのは、そう“信じて”いるんです。ひなせさんは、お母さんとの関係の中で、その部分がとても傷ついて、母親を母親だと“思って”いても、“信じて”はいないのかもしれません。』
探しても、たしかにみつからなくて、でも母親は後日談になるけどいたらしい。もちろんうちは父親が授業参観にいくような家庭ではないので、母親がきているんだろうとはわかっていた、、けど、みつけられなかった。そのみつけられなかったというのが、S先生はとても引っかかるといってたかな。普通は感じるものだし、お母さんみてるぞ!ってやる気になるし、もしいないかも?って不安になってもかならずみつけるし。でもななは、そもそも母親がどういう顔でどういうふるまいをしていたかとか、そういうのをまるでおぼえてなかった。普段より、すました服を着てるとか、メイクしてるとか、そういうことじゃなくて、母親が母親であるという、ママがいるんだ、ななをみてくれてるんだ、って根本的信頼感が抜け落ちて、事実でしか母親がいたことをおぼえてない。事実でしか、とかいってるけど実はまったくおぼえてなくて、当時は母親は来なかったという結論になってたくらい。いまは、たぶん来てたんだろう、ってくらい。成長した。
ななはいまだに、父親や母親の顔がよくわからない。まさくんと結婚したとき、エスコートの練習の段階で知らない、スーツのおじさんに父親代わりにエスコートの練習させられて、いくら練習だからって適当な人をあてがうのかぁ、、結婚式ってけっこう適当なんだなぁ、なんてぼんやり思ってたら途中で父親だって気づいた。びびった。いつからいた?って本気でおもった。その父親(らしき人)にエスコートされてまさくんのところにたどり着いたときはうれしかった。ななは、両親への手紙を読むという古典的かつ期待されうるものを用意して、そこに虹の絵を描いた。気に入ったびんせんがなかったからだけど、その虹には、ななの想いがこもっている。
あなたたちといた日々はずっと雨でした。まさくんとであってななは虹をみれました。これからは晴れた空の下をまさくんと歩んでいきます。さようなら、雨の日。
母親は泣いていたし父親も泣いていたみたい。嘘は書いてないよ。でも、もうさようならなの。。
ななは、あれからいろいろかんがえました。父親は去年だかそのまえだか手術しています。その前年も仕事で怪我をして入院しています。
父親は母親よりかなり上で、正直にいうといつ死ぬかわからないくらい不健康な生活。でも、父親がたとえ亡くなろうが、母親が先だろうが、伯母さんなくなったよななちゃんお世話になったでしょ、ってママがいくらいっても、ぜったいにもう実家には帰りません。帰らないし、帰るって感覚がもうない。家じゃないとおもってる!
だから、父親や母親の顔なんかわからなくていいし、母親を母親としんじられなくていまおもえば当然だし、傷ついたななをたいせつにしてくれるまさくんがいれば、この先だいじょうぶなんです。。
流行りの毒親だなんてこれっぽっちもおもってない。
ただただ、ななにはしんじられないだけ。